2/3 N響定期A@神南

ヨハン・シュトラウスII世/ポルカ「クラップフェンの森で」作品336
ショスタコーヴィチ/舞台管弦楽のための組曲 第1番 -「行進曲」「リリック・ワルツ」「小さなポルカ」「ワルツ第2番」
ショスタコーヴィチ交響曲 第13番 変ロ短調 作品113 「バビ・ヤール」

指揮 : 井上道義
バス : アレクセイ・ティホミーロフ
男声合唱 : オルフェイ・ドレンガル男声合唱

井上道義ことミッキーの最後のN響定期ということで、定期Aプログラムですが、広いN響がほぼ満員。しかも、メインプログラムがショスタコの「バビ・ヤール」ということで、まあミッキーの集大成という位置付けなのでしょうね。
  
前半の大衆音楽はなかなかお洒落で、そういえば、映画「アイズワイドシャット」でもワルツが効果的でしたね。N響を聴きながら、クーブリックの天才的な音楽センスに想いを馳せました。ミッチーは、指揮しながら踊りまくってました。

後半「バビ・ヤール」は打って変わって、ショスタコの狂気と諧謔と暴力と叙情がごちゃ混ぜになった名演でした。1時間近くの大曲ですが、ずっと重たい緊張が延々と続きます。観客の集中力も大したもので、固唾を飲んで見守っていました。
第二次世界大戦中にウクライナで起こったナチスによるユダヤ人大量虐殺現場である「バビ・ヤール」を皮切りに、陰鬱な光景が、バスソロと男性合唱団の掛け合いで延々と繰り返されます。その間に、狂気を含んだ乱痴気騒ぎや恐怖政治の不気味さが差し込まれ、最後は、ロシア聖教の鐘の音で希望と浄化が静かに現れます。

カーテンコールは近年のN響定期ではブロムシュテッドのマラ9の時くらいの大盛況。N響+ティホミーロフ+オルフェイ合唱団の全てがレベルが高く、高次元でアンサンブルされていましたが、これを取りまとめたミッチーの凄さがよくわかりました。それにしても、これだけ美しい男性合唱団は、日本では実現できないでしょうね。大音声でも音が濁らない。日本のオケは最早ヨーロッパのオケと遜色ないレベルですが、合唱団はやはり明確な差がありますね。
ティホーミロフは、すでに容姿からして、日本人のバス歌手とは明らかに違いました。声量の豊かさが違うんですよね。人間の身体を楽器にする声楽は、やっぱり身体が大きくないと、響かないということでしょうね。ここも日本人は辛いなあ。