11/18 東響名曲全集@ミューザ川崎

指揮:ジョナサン・ノット 
ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
チェロ:伊藤文嗣(東響ソロ首席奏者)

リゲティアパリシオン 
ドビュッシー:3つの夜想曲より 「祭」
ブーレーズ:メサジェスキス ~独奏チェロと6つのチェロのための~
アマン:グラット 
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 op.73 「皇帝」

前半現代音楽、後半王道ベートーヴェンといういつものノット+東響のフォーマットでしたが、今回は、前半が強烈すぎました。

冒頭リゲティの「アパリシオン」。トーンクラスター発祥の歴史的な曲です。リゲティについては、当代きっての名人ノットの腕が冴えまくります。リゲティの難曲を、いとも簡単に、しかも美しく指揮していました。このノットの指揮が観たいために、今回はP席前列の中央を陣取りました。

二曲目の「祭」は、無調性との対比をより一層引き立てる色彩豊かなサウンドになりました。

ここから、チェロ隊だけをフロントに並べての、ブーレーズ「メサジェスキス」。ノットは、ブーレーズの創設した「アンサンブル・アンテルコンタンポラン」の4代目の音楽監督を務めた人ですからね、本家本元のタクトです。東響チェロ軍団が、非常に緊張感の高い精密な演奏を繰り広げました。コーダは、涅槃の境地を感じさせる不思議な感覚でした。

前半最後は、日本初演のアマン「グラット」。これは今日のメインと言っても良いボリュームでした。波のように繰り返される音圧に、身体的な感覚が麻痺していくのですが、それが徐々に気持ちよくなっていきます。凄い曲でした。

後半は、打って変わって、王道の「皇帝」。オピッツ爺の、これぞ正統派ドイツピアニズム、というのを見せつけられた威風堂々たる演奏でした。音が綺麗で、どこにも力が入っていませんが、圧倒的な風格を感じました。これは、日本人の若手では出せない味でしょうね。ノット+東響も、極めて正統派の解釈で、オピッツのピアノに寄り添っていました。

ノット+東響の強みは、今日のような尖ったプログラムを名曲全集で組めるところでしょう。リゲティブーレーズも、ノットの手にかかると、極めて自然なタクトが振られます。これは、日本人指揮者には、実はなかなかハードルが高いんですけどね。