5/20 東響定期@サントリーホール

リゲティ:ムジカ・リチェルカータ 第2番(ピアノソロ=小埜寺美樹)
マーラー交響曲 第6番 イ短調 「悲劇的」
指揮者:ジョナサン・ノット.

熱狂と狂乱の「エレクトラ」から1週間も経っていませんが、これまた大曲、難曲のマーラー6番でした。
色々と仕掛けがあり斬新なプログラムでした。
冒頭は、リゲティピアノ曲。この曲、F(ファ)とF#とG(ソ)の三音だけで構成されているのですが、異様な緊迫感があります。映画ファンならこの曲を聴くと、クーブリックの「アイズワイドシャット」の異様な世界を即座に思い出します。そこから間髪おかずに、アタッカーでイ短調(ラ)のマーチが始まります。音階が綺麗に並んで連続性が意識されます。異様な世界の扉が徐々に開かれて全開した、と感じさせる素晴らしい構成です。恐らく、ノットのアイデアでしょうが、こういうセンスがたまらないです。
第一楽章は比較的重めのテンポ。東響メンバーは、流石に先週の疲れが残っているのか、ところどころで乱れが素人(私)でもわかるレベルでありましたが、この曲の持つ複雑な感情(重苦しかったり、グロテスクだったり、突然脳天気になったり)はよく出ていたと思います。中盤のカウベルはLC席から鳴らしていて、今回一回席10列目前後の中央席だったので、カウベル音が、左背後から聞こえてきて、摩訶不思議なサラウンド感覚を味わいました。
第二第三楽章は、スケルツオ→アンダンテの順番。こちらの順番が私も好きです。アンダンテの静寂と美しさが際立ちます。
第四楽章のハンマーは5回。SNS上でやたら取り上げられてましたが、初稿も5回だったそうで、極めて自然で違和感はありません。
私は、マーラー中期の中では、この6番が一番好きなのですが、6番は単純に美しいとか、感動する、といった分かり易さの対極にいる複雑な曲で、オケは演奏するのが非常に大変な曲だと思います。東響は、エレクトラの後に、よくやったなと思いました。ノットはサディストですかね、第四楽章の最後で、疲労困憊して英雄がぶっ倒れるところは、オケの皆様の心情と重なって見えました。
Tpの不調は、まあ不運としか言いようがない。金管は、外すと目立っちゃいますからね。翌日のミューザは無事だったそうで。
ミューザ川崎の方は、しばらくニコニコのタイムシフトで観れるらしいので、今日の夜にでもお酒飲みながら観よう。