7/14 ニンフォマニアック

*以下は、18禁のエログロの内容を一部含みますのでご注意ください。

ラースフォントリアー監督の新作公開に合わせて、現在、渋谷ヒューマントラストでラースフォントリア・レトロスペクティブを開催しており、過去の作品が全て鑑賞できます。

この監督のことが私はかなり好きでして、本当は全部の作品を観たいのですが、スケジュールの都合で泣く泣く、鬱三部作のみを見ることにしました。
まずは、ニンフォマニアック完全版。前編後編合わせて5時間の大作、今回は、ディレクターズカット完全版で、完全な形では劇場初公開です。配給会社も相当頑張ったのでしょうね、レイト18指定の成人映画扱いで、モザイクほぼ無しです。局部やら男性器と女性器の結合部分とかまでもろに写ってます。ネットに溢れている無修正のポルノレベルです。

タイトル通り、色情狂の女の半生を描いた作品で、シャルロットゲーンズブールが主演です。ソフィーマルソーと並ぶフランスの大女優ですが、よく出たなあ。まあ、お母さんのジェーン・バーキンも結構際どい映画に出てたし、お父さんがセルジュだから、エロに対するハードルは低そうですが。流石に、ハードなセックスシーンは代役のポルに女優が務めていますが。

この映画がトリアーの本質だと思います。これに比べたら、一般的には傑作と言われる「ダンサーインザダーク」なんて甘い甘い。

映画の内容は、一見ポルノと見せかけておいて、実は大変深い哲学的な内容となっています。それでいて最後は大爆笑です。

主人公は、初老の童貞男(これが凄いクセ者)との禅問答のようなダイアローグの中で、変態的なセックス経験を語りながらも、現代文明やキリスト教についての根源的なテーマについて、深く語り合います。「キリスト教におけるローマンカソリックギリシア正教の本質的な違い」とか「ニグロに代表される言葉狩りへの警鐘」とか「キリスト教における法悦とオルガニズムの同一性」とか「男性が中絶について語る不毛さ」とか「ウーマンリブ運動に対する軽蔑」とかです。更に、バッハとベートーベンの音楽性についても語っており、ちょっと収集がつかないくらいの文化的な広がりです。「ベートーベンはフーガの伝統を壊したのではなく新しいフーガを作ったのさ」なんて私のようなクラオタだと膝を叩いて納得します。しかも、使われる音楽も、ショスタコービッチとバッハとモーツアルトです。エログロの映像に、格調高い、ジャズ組曲のワルツが流れます。
ヨーロッパの本物の文化人は、こんなにアナーキーで、こんなに変態なんだなあというのがよくわかります。個人的には、ラースフォントリアーは、現代のイングマルベルイマンです。
5時間の長丁場、エログロと知的好奇心ろお笑いを充分に堪能させてくれる映画でした。なお、劇中、主人公が、自分でメスを使って人口中絶するシーンがあるのですが、リアル過ぎてトラウマになります。流石に私は眼を背けてしまいましたが、隣に座っていたお洒落系のボッチ女子推定20代はホットドッグをガツガツ喰いながらこのシーンを平然と観てました。東京って凄いなあ。