8/12 マンダレイ

ドッグヴィル」の続編の「マンダレイ」を観てきました。内容はますます過激です。

アメリカの人種差別」がこの映画のテーマなのですが、最終的に、映画の中で、黒人に「アメリカは黒人を平等に扱うことに慣れていない。だから、俺たちは、元通りの奴隷の役割に戻る方が楽なんだ」と言わせます。要は、安易な「平等主義、民主主義」の拒絶です。

この映画は、興行的に大失敗、批評家からも酷評され、今では、無かったことにされている映画です。

ストーリーをかいつまんで書くと、ドッグウィルを壊滅させたグレースが、アメリカ南部のマンダレイという農園にやって来るのですが、その農園では、合衆国憲法で禁止されている奴隷制度が未だに採用されており、正義感に駆られたグレースが、奴隷制度を破壊し、民主主義をギャングの力で半ば強引に実践しようとするのですが、それがことごとく上手くいかず、最後はうんざりした黒人自身が奴隷に戻ることを望み、グレースは這這の体でマンダレイを逃げ出す、という話です。

理想主義に燃えるグレースが、もう本当にウザくてウザくて、これは明らかにアメリカのリベラルを皮肉っています。また、人種を区別して役割を分ける政策は、中東の金持ち国家やシンガポールが実際にやっている政策ですが、これを痛烈に皮肉っています。(彼らは公にはそのことは認めていませんが。)

映画の中のラースフォントリアの視点はずっとニュートラルで、安直な民主主義を皮肉りつつ、かといって、奴隷制度を肯定している訳でもありません。あえていうなら、どちらもバカにして、おちょくっています。

その諧謔的な精神が楽しめないと、この映画は不快に感じるでしょうね。アメリカのリベラル層の強烈な拒否反応がわかります。

トリアーは、この映画でアメリカ進出の道が決定的に閉ざされましたが、自分の撮りたいものを撮る、というスタンスを何があっても変えないのは、映画監督として素晴らしいと思います。