ウォン・カーウァイの4Kレストア版

ウォン・カーウァイの代表作の4Kレストア版が、8月中旬から全国公開されています。

unpfilm.com

このタイミングで、U-Nextでも、同じ5本のレストア版(4Kではない)が見放題で配信されています。おそらく、劇場公開のキャンペーンだと思いますが、私のように4Kにこだわりのない人間にとっては、家のリラックスした環境で、それなりの大きさとサウンドのTVで観ることができるので、大変ありがたいです。←こういう人多いはずので、このキャンペーンは失敗なのでは?

ウォン・カーウァイといえば、90年代に一世を風靡したお洒落監督です。ハリウッドのタランティーノ、フランスのカラックス、香港のカーウァイが、イケてる3監督でした。彼は、カンフーだけの香港映画のイメージを根底から変えました。

当時20代後半だった私は、「恋する惑星」に衝撃を受けて、渋谷のレイトショウに足繫く通いました。「恋する惑星」に描かれていた香港は、パリやニューヨーク以上に、世界で一番お洒落な都市でした。私は、映画に触発されて、香港に2泊3日の強硬日程を組んで、ランカイフォン(香港島のお洒落スポット)のスタンディングバーでオールナイトしてました。

20数年ぶりに全作品をぶっ通しで観ましたが、懐かしい気持ちと同時に、正直なところ、「なんでこんな映画に夢中になっていたんだろう」と思いました。

ウォン・カーウァイはストーリーが空っぽですね。映像が美しいのに騙されていましたが、あまりに内容がなさ過ぎて、出来の悪いゴダールを観ているような感じです。

  • 恋する惑星・・・フェイ・ウォントニー・レオンが若くてピチピチしています。映像は今観ても衝撃的ですが、ストーリーは、コミュ障の女の子のお転婆話で、痛いだけ、という感じ。
  • 天使の涙・・・これは、もうストーリが意味をなしてないので、クリストファー・ドイルの流麗なカメラワークを楽しむだけですが、夜の香港をバイクで疾走するシーンは本当に美しい。それにしても、内容ないので、流石に後半は飽きました。
  • ブエノスアイレス・・・地球の反対側までいった香港人イカップルの痴話喧嘩を延々と見させられる映画です。ただ、一部の人には深い感銘を与えており、オスカー作品賞受賞の「ムーンライト」は、この映画にオマージュを捧げています。たしかに、オープニングの「ククルクルパロマ」が流れるシーンは鳥肌が立つくらい美しいです。
  • 花様年華・・・ぐだぐだな不倫をいかにスタイリッシュに見せるか?というのに精魂込めた映画です。まあ実際にスタイリッシュなのは凄いんですが。
  • 2046・・ジャニーズの圧力で、キムタクも出てますが、まあそんなレベルの映画です。トニーレオンが、最早、村上春樹の小説の主人公のように、何をしたいのかさっぱりわかりません。が、トニーレオンが相変わらず恰好いいので、彼のプロモーションビデオを観てるみたいです。

今観ると、どの映画も突っ込みどころ満載ですが、当時は、一般人だけじゃなくて批評家もまんまと騙されてました。カンヌで監督賞受賞、とか、NY批評家協会賞受賞とか、なかなかの経歴です。

恋する惑星」を観ていて、そういえば、昔、香港へ行って、舞台となったエスカレーター観てきたな、と思って写真を探したらありました。この頃は若かったな、というノスタルジックな感情が湧き出てきます。

香港セントラルの延々と続くエスカレーター