7月は家に引き篭もってPTAの映画を観ていました

異常気象ですね、7月はずっと雨が降っていて気温も上がらず、しかも、コロナのせいで、完全に引き篭り状態でした。 それで、有り余る時間を何に費やしていたのかというと、Paul Thomas Anderson、略してPTAの全映画8本を、制作順に観ました。
今年の春に、スターチャネルの特集で組まれていたものを録画しておきました。

1.ハードエイト

デビュー作でこのクオリティ、いきなり凄いです。ストーリーテラーの才能が溢れてます。役者も凄いメンツです。

2.ブギーナイツ

町山さん曰く、1990年代のNo.1映画、とのことですが、私も同意見です。カメラと脚本と役者と音楽がクールです。私は、これとタラちゃんのパルプフィクションが、アメリカの現代カルチャーを描いた頂点の映画だと思います。ポルノ映画業界の話なので、レイティングは成人向けですが、神話のような風格と下世話なファンキーが同居している奇跡のような映画です。

3.マグノリア

アルトマンのショートカッツをやりたかったんでしょうけど、ちょっと冗長過ぎますね。でも、トムクルーズの男根教のカリスマ指導者はハマり役です。

4.パンチドランクラブ

アダムサンドラーの神経質な魅力がよく出ています。普段は大人しいんだけど、パニックでコントロール出来なくなると、異常な切れ方をする男のリハビリ物語です。

5.ゼアウィルビーブラッド

これは、ダニエル・デイ=ルイスの芝居を堪能する映画です。2時間半、全部のスクリーンショットに出続けますが、いつまで観てても全く飽きません。カメラと音楽は、格調高く、重厚で気品があります。テーマは石油と宗教で実はアメリカそのもの。

6.ザ・マスター

個人的に一番好きな作品です。フィリップ・シーモアホフマンは改めていい役者ですね。あまりに早すぎる死で残念です。これも、第二次世界大戦のトラウマからのリハビリ男の話ですが、やはり、カメラと音楽が素晴らしい。ホアキンフェニックスが完全に逝っちゃっていてリアルに怖いです。凄い役者です。

7.インヒアレントバイス

これは、アルトマンのロンググッドバイをやりたかったんだろうな。ただ、フォロアーとしては、コーエン兄弟のビッグリボウスキイの方が出来がよいです。ちょっと冗長で話が纏まっていない感じ。

8.ファントムスレッド

ダニエル・デイ=ルイスを役者引退に追い込んだ罪づくりな映画ですが、これもカメラと音楽が素晴らしい。モデルは、バレンシアガだそうですが、まあドレスが美しいです。カリフォルニア出身のPTAですが、見事にロンドンの空気をつくっています。

PTAは、ストーリーテラーであり、カメラワークが流麗かつ重厚で、音楽がクールです。コメディタッチの映画でも、映画に気品と重厚さが出ます。カンヌ、ベルリン、ベネチアの監督賞はすでに持ってますが、オスカーは未だ獲得しておらず、キューブリック、あるいはオーソンウエルズのような無冠の巨匠になる可能性が高いでしょう。

また、お気に入りの俳優のセンスがいいですね。ダニエル・デイ=ルイス、フィリップシーモアホフマン、ホアキンフェニックスの3人を繰り返し使っていますが、3人ともタイプは違いますがガチの天才です。もう、ちょっと他の役者とレベルが違う感じ。 それだけに、フィリップシーモアホフマンの早すぎる死は残念です。円熟期の芝居を観たかったな。