1/14 N響定期A@神南

指揮者:トゥガン・ソヒエフ
ピアノ独奏:ハオチェン・チャン
ブラームス/ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 作品83
ベートーヴェン交響曲 第4番 変ロ長調 作品60


久しぶりにソヒエフ+N響を聴いてきました。私はやはりソヒエフが好きです。アンサンブルが精密で美しく、指揮が美しい。タクトを振っている姿が、本当に楽しそうで、観ているだけでこちらまで幸福にしてくれます。個人的には、今のN響と一番相性の良い指揮者だと思います。
ロシアによるウクライナ侵攻により、トゥールーズ国立とボリショイ歌劇場の両方のポスト辞任してもうすぐ1年になります。こんな状況にも関わらず、勇気をもって招聘したN響には感謝の言葉しかありません。
今回の来日は、ソヒエフの懐の深さを見せつけるように、定期のABCが、それぞれドイツ、フランス、ロシアで構成されています。素晴らしい構成です。全部の定期に行きたかったのですが、Bだけが日程的に合わず泣く泣くあきらめました。
今日はA定期で、王道のドイツプログラム。前半、ブラームスのピアコン2番で、ソリストはハオチェン。彼も数年前のフィラデルフィアのラフマ2番以来です。その時は、いかにもアメリカで教育を受けた中国系の若手の気鋭ピアニストといった感じで、無類のテクニックとイケイケ感で、郷愁も何もあったものじゃないという感じでした(ただ、フィラデルフィアのゴージャスな音には非常にハマっていて、これはこれで素晴らしかった)、今回は歳をとった分だけ、落ち着きと渋さが出てきました。もちろん指は文句なく回っていましたが、やりすぎない微妙なアコーギグがとても気持ちがよかったです。彼も中庸の美という概念を理解したのね。ソヒエフは、室内学的なアプローチで丁寧なサウンドを構築していて、オケも美しく鳴っていました。
後半のベト4は、これはもう疾走感と、美しく、細部まで明晰なアンサンブルと、歌うような指揮ぶりで、始終幸福な気分になる名演でした。あっという間の40分。ソヒエフの良さが十二分に出ていました。ソヒエフ+N響で、ベートーベン・チクルスをやって欲しいと思います。 来週のオールロシアプログラムも楽しみです。