ベルリンフィルのワルトビューネがオールロシアプログラムの意図は

先週日曜日の深夜のNHK BSプレミアムシアターを録画しておいて、先ほど視聴しました。

本来の目的は、今評判の沖澤のどかさんのベルリン修行のドキュメンタリーだったのですが(これはこれでおもしろかった。ペトレンコのアシスタントディレクターとかストレスで死にそう)、その後にベルリンフィルの今年のサマーコンサート(ワルトビューネ)のフルバージョンをやっていました。

8月中旬に地上波の方でダイジェストはやっていたのですが、フルバージョンは初めて視聴しました。ちょっと驚いたのが、レパートリーがオールロシアプログラムだったことです。これは明確なメッセージがありますね。

オープニングが、リャードフの「キキーモラ」。これは、コテコテのロシア民話。

セカンドが、ラフマニノフのPfコンチェルト2番。ソリストはゲルシュタイン(藤田真央クンのお師匠さん)で、指揮者とピアニスト、二人の「キリル」の共演です。二人ともこてこてのロシア顔で、ステージに大熊と子熊が二匹いるみたい。

後半のメインプログラムが「展覧会の絵」。普段なら、野外コンサートにありがちな「人気曲」のセレクトね、ということになるのですが、この曲、フィナーレは「キエフの大門」ですからね。(これは、最近の事情から、「キーウの大門」となるのかな?)

極めつけは、アンコール。チャイコフスキーの「くるみ割り」のグランパドゥドゥでした。もうこれは、完全に意図的ですね。久しぶりに、この曲聞いて、ボリショイ・バレエのゴージャスな舞台が頭をよぎりました。

キリル・ペトレンコは、今年の3月のロシアによるウクライナ進攻時に、ベルリンフィルと連盟で反対の意思表示をしたので、現在、母国には帰れない状況です。反対の表明しないと、ベルリンフィルの首席指揮者の地位を失う恐れがありました。そんな彼が、どういう意図で、今回のオールロシアプログラムを選んだんだろう。

単純明快に、「ウクライナがんばれ」ではないと思います。むしろ、「政治と芸術は別に考えるべき」というアーチストの強いメッセージではないでしょかね。

ロシア、政治的な問題は置いておいて、芸術の世界から、ロシアを締め出して半年たちましたが、正直寂しいですね。特にクラシックとバレエとフィギュアスケートは。

戦争が当分終わりそうにないので、後2~3年は、ロシア締め出しが続いて、寂しい状況のままです。レーピンなんて、今50代でバイオリニストとして一番油がのっている時期ですからね。しかも奥さん(ザハロワ)が、ウクライナ出身のボリショイのプリンシパルという極めて難しい立場です。

2022/23シーズンに、N響がソヒエフを客演で招聘します。これは、ぜひとも実現して欲しいですし、日本のオーケストラは、「政治と芸術は別に考えるべき」というメッセージを強く打ち出してほしいです。まあ、ソヒエフが日本来るなら、チケットはソールドアウト確実だと思いますけど。