藤田真央クンのルツェルン祝祭デビュー

藤田真央クンのルツェルン祝祭デビュー公演が以下のサイトで9/16まで視聴できます。

www.srf.ch

真央クンの最大の魅力である、一音一音の美しさと、内声の豊潤さ、大胆で感情あふれるアコーギグが堪能できる素晴らしいラフマニノフの2番でした。会場の興奮が凄いです。

アゴーギグ(Agogik)とは、音楽理論家「フーゴー・リーマン」による造語で、「速度法、緩急法」を意味しますギリシャ語「agoge」(速度変化による表情を意味します)が語源で、音楽上の表現方法のひとつです。 テンポやリズムを自然に揺らす(伸び縮みさせる)ことで、音楽に表情をつけます。

本人のインタビューでも、以下のように語っていますが、彼のユニークな演奏スタイルが、ルツェルンのような大舞台でも、全くブレずに貫かれていました。また、指揮者のシャイーとの信頼関係も非常に厚いようです。

メロディはしっかり響かせつつ、メロディとベースに挟まれた、内声と言われる音の細かい動きも丁寧に追いたいので、繊細なパッセージではテンポをほんのすこし落としてみたりもしました。そんなわたしの演奏はユニークだとよく言われますが、そこはシャイーも同意見のようで、「新しい解釈だな」と口にしていました。そしてそれをおもしろがり、どうやってオーケストラと調和させるかをイチからいっしょに考えてくれた。

ピアニスト・藤田真央「スカラ座デビュー! ”ポリーニ以来”と評された一夜」 藤田真央「指先から旅をする」#04 | 特集 - 本の話

彼の今後のキャリアにとっても、分岐点となるコンサートでした。要は、彼は勝負に勝ったのです。今後は、本当の意味でのワールドクラス(アルゲリッチポリーニレベル)のコンサートピアニストになっていくのだろうなと思います。

真央クンの飛躍を見て、改めて思ったのですが、天才が世の中に出ていくためには、本人の才能と努力はもちろん必要ですが、それに加えて、誰からも好かれる「人たらしな性格」と「好運をつかみとる力」が不可欠だと思います。

真央クンが「人たらし」なのは、もともと有名な話で、共演した指揮者が、ほぼ全員再共演したくなるそうです。あの独特な風貌と、ニコニコしながら心の底から楽しそうにピアノ弾くところに、みんなコロっとやられちゃうんでしょうね。

「親父ゴロシ」も有名で、ゲルギエフは、もう完全にメロメロだし、シャイーからも、スカラ座と今回のルツェルンで、相当な信頼を勝ち取りました。

「幸運をつかみとる力」、これはもうチャイコフスキーコンクールの時からずっと続いています。一次審査のモーツアルトの衝撃は、一歩間違えば、徹底的に否定されるような個性的な演奏でしたが、これが圧倒的に支持されて、センセーショナルとなり、ゲルギエフを完全に味方につけました。

今年春のミラノスカラ座デビューも、直前のロシアのウクライナ進攻で、ゲルギエフの出演キャンセルとなり、中止か、とやきもきさせましたが、代役がまさかの正指揮者のシャイーで、彼はこの勝負にも勝ちました。ここでシャイーの信頼を得たのが、今回のルツェルンデビューに繋がっています。

クラウスマケラ(指揮者)と藤田真央クンは、これから10年、20年と追い続けていくことになると思いますが、これはとても幸せな予感です。

真央クンの11月の凱旋コンサート@サントリーは、もちろんチケット押さえました。ラフマの2番と3番です。若いから体力あるんだろうな。