12/19 都響定期B@サントリーホール

指揮/アントニ・ヴィト
ピアノ/反田恭平

キラール:前奏曲クリスマス・キャロル(1972)
ラフマニノフピアノ協奏曲第2番 ハ短調 op.18
ペンデレツキ:交響曲第2番《クリスマス・シンフォニー》

ポーランドの巨匠を招聘して、ポーランドの20世紀の現代マイナー曲を、間に古典的名作で挟むという集客を意識したプログラム構成。それにしても満員御礼の公演にも関わらず、前半の反田のピアコンが終了すると。一挙に空席が目立つ状況になってしまい、ちょっと残念でした。今日のプログラムのメインディッシュは、ペンデレツキだったんですがね。まあ、会場を埋め尽くすソリタファンを見て、こうなることは容易に想像できましたけど。

最初のキラールからして、すでに20世紀のポーランドが置かれた悲惨な状況が漂う重い曲。弦楽4部を取り囲むような4本のオーボエで、とてもじゃないですが、クリスマス・キャロルのハッピーな雰囲気は全くなし。この人は映画音楽も手掛けていて、「戦場のピアニスト」もこの人で、そういえば、あの映画も随分と悲惨だったなあ、とか思いながら聞いていました。

二曲目のラフマのピアコン2番は、流石の反田の風格ある演奏。この人、貫禄がついてきて、日本を代表するピアニストになったなと思います。同時に、やはりラフマは、体格の良い男性ピアニストが弾くべきだと思いました。音に重さを満たせるために、ここ数年であえて身体を大きくした反田の努力がよく現れていて、ffの圧倒的な力強さと、ppの蕩けるような優しさが交互に繰り返されて、ラフマのセンチメンタリズムが花開いていきます。冒頭の教会の鐘の音を表現するピアノ独演で引き込まれて、第一楽章クライマックスでは目に熱いものが溢れてきて、第二楽章では、永遠に失われた夏の平和な日々を思い出し更に涙し、最終楽章のカデンツアで歓喜爆発しました。  
ただ、これほどの有名曲となると、私のようなクラオタは、お気に入りのピアニスト版があります。私にとってのお気に入り版は、若かりし頃のアシュケナージと藤田真央です。反田のこの曲に対する解釈は、ちょっと独特なアコーギク(テンポの意図的な揺れ)があって、それが新鮮でもあり、ほんの少しの違和感もありました。
アンコールの「献呈」は文句なく素晴らしかったです、これは、サントリーホールでピアノリサイタルを聴きたいな。

メインディッシュの「クリスマスシンフォニー」は、20世紀、ポーランドワレサ率いる連帯が立ち上がり、自由化闘争が繰り広げられるのですが、結局、ソビエトの武力侵攻で潰された時期に書かれた曲で、当時の世情をよく表現しています。闘争→勝利歓喜→敗北→絶望→そして何もなくなりました、というストーリーがあっという間の35分でした。都がヴィトの意図するニュアンスを忠実に汲み取っており素晴らしい演奏でした。しかし、都響はレベル高いな。めちゃくちゃ上手い。
ペンデレツキは、元々都響との関係が深く、生前は本人が都響を振ったほどの近い関係にあります。そういう背景もあり、今日の都響は、ちょっと気合が違いました。また、クリスマスにあえてこういうプログラムを持ってきた都響のセンスが素晴らしいと思います。
今年のコンサートはこれで打ち止め。今年は、第九はどの公演にも行きません。