6/14 N響定期C@神南

イベール/寄港地
ラヴェル/左手のためのピアノ協奏曲
ドビュッシー夜想曲*

指揮 : 沖澤のどか
ピアノ : デニス・コジュヒン
女声合唱 : 東京混声合唱団*

今年からサイトウキネンの首席客演指揮者となり各方面から引っ張り凧の沖澤さんを聴きに行ってきました。


プログラムのテーマはフランス近代音楽。割と地味な選曲ですが、実はかなり好きな曲の集まったセレクションです。
イベールの寄港地は、まんま「兼高かおる世界の旅」のキラキラ感が満載。ラヴェルのピアノコンチェルトは「ト長」のメジャーな方ではなく、あえて不安感のある「左手」。ドビュッシーも「海」ではなく、捉えどころのない不思議ちゃん系の「夜想曲」。相当自信がないとできない選曲です。

で、やっぱりN響は抜群に上手いなあというのが正直な感想。まあ、N響の美味さをナチュラルに引き出しているというのが指揮者の力量なので、そういう意味では沖澤さんが凄いんですけどね。

ピアノソロのコジュヒンは、この曲をレコーディングしているだけあって、完全に手の内に収めていました。第一次世界大戦で右手を失ったピアニストのためにラヴェルが書いた曲なので、右手が普通に使えるピアニストもこの曲は左手だけで弾きますが、片手だけの音色の低さという弱点をカバーするために、とんでもない技術を要します。なので、演奏する人は準備が大変で、あんまり演奏される機会がないのですが、コジュヒンは、この曲を相当に弾き慣れているみたいで、ドライブ感が半端ないです。オケを自ら煽っている感じでした。カデンツアの迫力が凄かった。

夜想曲は、雲→祭→セイレーヌの3曲とも、独特の浮遊感が漂い、N響の弦のシルキーな響きが絶妙でした。特にセイレーヌは、女性合唱団のボカリーズが加わり、ドビュッシーの摩訶不思議な感覚と夜の濃密さが強く感じられました。

全体を通して、沖澤のどかの強い個性、というものは特に感じませんでしたが、N響からこれだけ美しいアンサンブルを引き出していて、このコンビはフィットするなと思いました。次回も定期公演に登壇して欲しいです。