瞳をとじて

未だ生涯で3作品しか監督していないにも関わらず、処女作「ミツバチのささやき」の伝説化、神話化により、「スペインの巨匠」と讃えられているビクトル・エリセの31年ぶりの長編作「瞳をとじて」を観てきました。

エリセの新作は金輪際観れないと思っていたので、ちょっと嬉しい驚きです。
ちなみに、5年くらい前に、早稲田松竹でエリセの回顧展を観ました。

3時間弱の長丁場、かつエリセ独特のテンポで話が進んでいきます。私はこの独特の細かいカットを重ねていくタッチがかなり好きなので、終始、お酒を飲んで気持ちよく酔っ払っているような感覚で見ていましたが、最近の映画に慣れている人にとっては、退屈で長大なだけでしょう。ただ、オッサン二人でぼーっと海を見てるシーンとか、主人公が海岸で愛犬と戯れてるシーンとか、物語的には何の意味ないんですが、絵が綺麗で、そのゆったりとした時間軸に自分の意識も同期して、見入っちゃうんですよね。うるさい映画音楽もないし。

ストーリーは、公式サイトに載っていますが、失われた過去への哀愁と再生の物語です。ラストは観客に解釈を委ねる形式ですが、これも多くを語らないエリセ独特のタッチです。 
ミツバチのささやき」の少女アナが、50代の女性として登場してきます。役柄も明らかに、「ミツハチ」を想起させます。映画のラストでは、「ミツバチ」の重要なセリフが、再度重要なセリフとして使われるマニアックな遊びもあります。
精神的に疲れている時に、心を落ち着かせるのにはうってつけの映画です。そういえば、「ミツバチ」もそういう映画でした。