偉大な監督の凡作「異邦人」

今週に入ってから、東京では花粉が飛びまくっていて酷いことになっており、私は、重度の花粉症のため、終日家に引きこもっています。こんな時には、U Nextのマイナー映画を見まくります。

それで、本日は、ルキノ・ヴィスコンティの「異邦人」を観ました。これは、ネガが紛失してしまい(イタリアっぽい話ですが)、上映不可能の幻の映画と言われていましたが、最近ネガが見つかり、復元作業を経て、日本でも公開されました。私は、日本公開時には、都合が悪く観ることができなかったのですが、いつの間にかU Nextの見放題映画にひっそりと追加されていました。

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主演がマルチェロ・マストロヤンニで、共演がアンナ・カリーナという当時の豪華スター共演ですが、これは、ヴィスコンティの映画としては凡作だと思います。はっきりいうと、マルチェロとアンナの無駄遣いです。マルチェロがフェリー映画で見せるユーモアと知性は全く感じられず、アンナがゴダール映画で見せるキュートさも全く感じられませんでした。

カミュの原作に比較的忠実に撮っていて、劇中のモノローグも原作そのまま引用というところがありますが、これはやっつけ仕事の感が強いです。

ヴィスコンティと、実存主義カミュは本質的に合わないですね。ヴィスコンティ自身が、平民の実存主義とかには興味ないんでしょうね。おそらく、制作者のラウレンティスに大金積まれて、割り切って撮ったんだろう。90分の短い映画だったので時間の無駄遣いという精神的なダメージはありませんでしたが、これはヴィスコンティのキャリアから、本人も抹殺したい映画だと思います。

ちなみに、この「異邦人」から2年後に、ドイツ三部作「地獄に落ちた勇者ども」「ベニスに死す」「ルードヴィヒ」という映画史に残る作品を立て続けに撮っていきます。

U Nextには、それ以外にも「コックと泥棒その妻と愛人」とか「太陽はひとりぼっち」とか「ラストタンゴインパリ」とか、映画マニアむけの作品が結構揃っているので、3月もヒッキー状態が続くと思います。