ロバート・アルトマンの初期傑作選

早稲田松竹で、ロバートアルトマンの初期傑作選を特集していたので見てきました。
まずは、「雨に濡れた舗道」

1969年の映画です。これは初見でした。内容はサイコスリラーです。アルトマンは、すでにキャリアの初期の時点で、女性の性的欲望と境界線異常性をぼかす事なく直接的に描きます。この人、本当はゲイじゃないのかなと思うくらい、女性に対する目がシビアかつ冷徹です。
30代の孤独なブルジョア女性が、ふとした偶然で、若い男を家に匿うようになり、徐々に狂っていき、最後は大惨劇になる、という悲惨なストーリーです。「危険な情事」を20年先取りしています。後味悪い映画です。

2作目は、「ロング・グッドバイ」。これは、もう何十回と観ています。最初に観たのは20代です。

LAを舞台にした都会的アウトロー映画の頂点です。この映画がなければ、「ジャッキーブラウン」も「ビッグリボウスキー」も「インヒアレント・ヴァイス」も生まれなかったでしょう。日本でも松田優作が非常に影響を受けていて、「探偵物語」は主人公をまんまパクってます。

アルトマンの撮るロスアンジェルスは、なんというか、明るいだけじゃなくて、カラッとした悲しみがあるんですよね。ユーミンが言うところの「悲しいほどお天気」という感覚。これは、ニューヨーク出身の監督では絶対に撮れない空気感です。
ポール・トーマス・アンダーソンは、アルトマンからの影響を公然と認めていますが、まさに正当な後継者だと思います。そうすると、アルトマンと同じく、結局オスカーの監督賞は取れないでキャリアが終わるのかな?