PERFECT DAYS

これは役所広司を観るための映画です。まるで、ダニエル・デイ=ルイスのように、一人で映画を全部背負っています。全てのシーンに登場してますし、彼のアップ映像が頻繁に使われます。意図的に説明を省略したヴィム・ベンダースのいつものスタイルですが、彼の感情あふれる表情がストーリーテリングになります。カンヌで主演男優賞を獲ったのも納得です。
いつの間に、こんな凄い俳優になったのでしょうか。昔、「失楽園」とかに出てた時は、トレンディ俳優なのか本格派なのかよくわからない中途半端な感じでしたが、年齢を重ねるうちに完全に化けましたね。日本人で、ダニエル・デイ=ルイスやケイト・ブランシェットレベルの「主役を張れる」俳優が出てきたということです。

基本的に何も起こらない初老の肉体労働者の日常を淡々と描いているのですが、時々起こる些細な出来事が、非常に心に刺さりますし、主人公が堪らなく愛おしくなります。ラストの延々と続く役所のクローズアップは、観ているこちら側の感情が溢れてきます。
ヴィム・ベンダースは、東京の下町(浅草)と首都高を実に美しく撮っています。これも流石ですね。
浅草のスナックのママさん役で石川さゆりが出てきますが、そこで「朝日のあたる家」を歌っていて、これが実によい。まあ、オリジナルは、ちあきなおみですけどね。

アカデミー外国語映画賞獲れるといいですね。