指揮者:ジョナサン・ノット
演出監修 サー・トーマス・アレン
アスミク・グリゴリアン(サロメ ソプラノ)
ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー(ヘロディアス メゾソプラノ)
ミカエル・ヴェイニウス(ヘロデ テノール)
トマス・トマソン(ヨカナーン バスバリトン)
岸浪愛学(ナラボート テノール)
「サロメ」といっても、所詮は演奏会形式だから、と舐めてましたが、これは劇薬でした。終わった後は、興奮し過ぎて、しばらく脱力しました。
私がよい演奏会だと思う基準は、結局、自分の本能にどれだけ興奮を与えてくれたかというレベルです。そういう尺度で、今日のサロメは、今年6月のマケラ君+都響のレニングラードと双璧の別格な演奏会になりました。
タイトルロール演じるグリゴリアンの突き抜けるハイトーンは、後ろのオケが大音量で鳴らしても全く負けないどころか、オケを完全に凌駕していました。ラストは昇天もので、背徳感とエロスで震えがきました。
サロメの主役は、その内容から、どうしても美しい容姿が求められ、しかも、幼児性とエロスと狂気を同時に感じさせる演技力と、出ずっぱりの体力が求められる過酷な役で、ふくよかなおばさんソプラノがやると実は興ざめしますが、グリゴリアンは、サロメに必要な資質をすべてを備えており、今がサロメ役としてピークですね。このタイミングで日本で聴くことができたのは大変な幸運です。
ヘロデ役のヴェイニウスがまた抜群に上手い。ハリのある艶やかなテノールと細かな芸で、歌と演技で魅せます。流石、当代きってのパルジファルです。
それにしても、東響は、よくこれだけのソリストを呼んでこれたなと思います。HISがスポンサー降りてしまったので、財政的に厳しいはずですが。
ちなみに、金曜日のミューザ川崎の公演では、「オケとソリストのバランスが悪く、時々ソリストの声が埋もれる」という感想を見かけましたが、サントリーではそれは全く感じられませんでした。ホールの響きとの相性なのか、それとも、1日はさんでオケ側が調整したのかは分かりません。
今後、サロメをやる予定の日本のオケ・歌劇団は、今回の公演でハードルが上がっちゃったので大変だと思います。
「7つのヴェールの踊り」は、オペラ歌手の稚拙なダンスは、もういらないと思いましたね。すでに、グリゴリアン自身も、ザルツブルク祝祭のプロダクションでは踊ってませんが。
先日のショスタコ4番もそうでしたが、今秋は、ノットにノックアウトされています。実は、ノット+東響コンビは、今がピークなのかもしれないです。