ビクトル・エリセ 監督の回顧展

早稲田松竹で、ビクトル・エリセの特集を今週末までやっていると聞いて、台湾からの帰国当日ですが、高田馬場までいって、2本見てきました。ああ、疲れた。

ビクトル・エリセですが、寡黙な監督で、50年近いキャリアがあるのですが、長編は3本しか撮っていません。そのうちの一作目と二作目が連続して上映されます。

最初が、「ミツバチのささやき」。隣のトトロのパクリ元と言われる作品です。たしかに、二人姉妹と精霊(この映画ではフランケンシュタイン)が絡むファンタジー映画ですが、作られたのがフランコ独裁政権下の1973年のため、直接的な表現はほとんどなく、全て暗喩的な表現が用いられています。結果的に、解釈次第で、どうとでもとれる内容なのですが(これは少女から大人への通過儀礼だとか、バラバラな家族が分断されたスペインを暗喩してる、とか)トーンは一貫して重苦しいです。 カスティーリャ地方の荒涼とした大地の映像と相まって、フランコ独裁政権下の抑圧された雰囲気に支配されています。

二本目は「エルスール」。これは今回初めて観ました。作られたのが1980年代の民主化後ということもあって、「ミツバチ」とは対照的に非常に饒舌です。こちらも主人公は少女ですが、少女の独白が、過剰なまでに状況や心の動きを説明します。見ている側に想像の余地がないので、ちょっとtoo muchな感じすらします。話は、スペイン動乱時に心に傷を負った父親を、娘が質問責めで追い詰めて、最後は父親が自殺していまうという結構な話ですが、不思議と哀しくないです。 この饒舌な感じ、デジャブだなと思ったのですが、同じスペインのアルモドバルのタッチに似ていると気がつきました。もっとも、年代的には、アルモドバルがエリセの影響を受けたのでしょうが。