11/30 藤田真央 協奏曲の夕べ@サントリーホール

オーケストラ:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
指揮者:ロリー・マクドナルド
ピアノ:藤田真央
ウェーバー 歌劇「オイリアンテ」序曲
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 ハ単調 Op.18
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番 ニ単調 Op.30


「協奏曲の夕べ」とは随分と古風なタイトルですが、実質的には、ジャパンアーツ主催の藤田真央クンの凱旋公演です。演目も、ミラノスカラ座で弾いたラフマ3番と、ルツェルン音楽祭で弾いたラフマ2番でした。どちらも横綱級の2曲で、通常ならば2日公演で、今の真央クンの観客動員力を考えると、両日ともにサントリーをいっぱいにできると思いますが、ジャパン・アーツは太っ腹ですね。それでこの価格は、正直ディスカウントし過ぎな気もします。

会場は満員御礼でしたが、思ったよりも女性比率は高くなく、私のようなガチのクラオタのおっさんも結構見かけました。ここら辺が、アイドル的な人気の若手ソリスト(誰とは書きませんが)とは違うところです。

ラフマの2番、3番を続けて聴いて、改めて思いましたが、この人のピアノは、とにかく複雑で、奥が深いなと感じます。テクニックとエモーションの両方を備えており、同時に冷静にオケとの調和も計算しています。つまり、コンチェルトを引くソリストとしての総合力の高さを感じます。左右10本の指に均等な力を加えて弾くことができるので、今まで聞いたことのないような和声が曲の中からいくつも聞こえてきますし、音の粒がとにかく綺麗です。また、強音の高速パッセージをペダルに逃げることなく、完全に1音1音まで弾ききります。これには、「ピアノの貴公子」というイメージからはかけ離れた腕力の強さ(ドイツ、ロシア系)を感じます。かといって、テクニックに溺れるだけではなく、歌わせるところでは、テンポを揺らして、ピアノをいい具合に泣かせます。さらに、室内楽的な調和を求められるような2番の第二楽章では、絶妙なバランス感覚でオケをサポートします。

3番の第一楽章の終盤のカデンツァには度肝を抜かれました。呼吸ができないくらいの圧倒的な迫力。サントリーホール全体が息をのんだ感じでした。

これだけの大曲を2曲連続で聴くと、聴いている方も疲れるのですが、本人は終わった後は、いつもの風貌でケロッとしてました。恐るべし23歳です。

来年初頭には、ついにカーネギーホールです。私は、流石にNew Yorkへは行けないので、その前の横須賀を聴きに行きます。リサイタルはまた違った顔を見せてくれるのでしょうね。